あなたは、どんなときに歯科医院に行こうと考えますか?
日本では、虫歯ができたり歯が痛くなってから受診される人が多いのが現状です。
しかし、症状がでてから受診すると、検査から始まり治療には時間も費用も余分にかかります。なにより、歯の痛みをこらえながら、診察を待つのはつらいものです。
そして何よりも困るのは、大切な歯を削ったり抜いたりしなくてはならないことです。
虫歯になったら、歯科医院で治療してもらえばいい、なんて軽く考えていませんか。若い頃は気づかなくても、年を取ると生まれ持った自分の歯の良さに必ず気付かされます。自分の歯こそが一番使いやすく、一番丈夫なのです。
歯を失ったことを後悔しないよう、歯は大切にしなければなりません。歯をより長く使い、残していくためには、日ごろのケアをしっかり行い、虫歯や歯周病にならないようにすること、そして進行しないようにすることが必要です。
ある統計によると、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けてない人は平均して1年に2本の虫歯ができるそうです。
歯が悪くなってから歯科医院に行くのではなく、悪くならないよう歯をメンテナンスするために歯科を受診する。そう考えを変えてみませんか。
その発想こそが「予防歯科」という考えです。
日本では、年をとったら歯は自然と失われるものだと思っている人が大勢います。
確かに日本人の歯を調べてみると、80歳で残っている歯は平均7.4本しかないそうです。しかし、アメリカであれば85歳で平均15.8本、歯科予防の先進国といわれるスウェーデンでは75歳で平均19.5本の歯が残っているという報告があります。
これは、歯科予防に対する欧米諸国と日本の考え方の違いが原因です。日本の高齢者の歯が少ないのは老化によるものではなく、残すための取り組みをしていないだけなのです。
これから、歯を長く残すための取り組みを始めませんか。
家庭と歯科医院でのケアの両輪で
虫歯や歯周病の予防で大切なことは、歯ブラシやデンタルフロス、デンタルリンスなどを使った家庭家でのケアと歯科で行うプロのケアの両輪で歯を守ることです。
歯磨きなどではどうしても落ちない汚れも、歯科医院でクリーニングをしてもらえば、キレイに落とすことができます。
効果が実証されているフッ素洗口法
虫歯に関するWHO(世界保健機構)の調査によると、日本は他の欧米先進国に比べて、歯磨きの実施率は高く、1人あたりの砂糖の消費量も1/2程度なのに、虫歯の数は約3倍多いそうです。その原因として挙げられているのが、フッ素によるケアの普及の遅れです。
フッ素は虫歯予防に関して、高い効果があることが実証されていて、安全性にも大きな問題はありません。海外では以前から多くの国で、フッ素を使った虫歯予防が行われてきましたが、最近は日本でもフッ素が使われるようになってきました。
フッ素洗口のやり方
1日1回1分間、濃度の低いフッ素洗口液を口に含み、ブクブクとうがいをします。
4歳児から高齢者まで簡単にできます。
フッ素洗口法の効果とは
フッ素を使ったうがいによる虫歯予防の効果については多くの研究があり、効果が認められています。4歳から実施すると、40~80%の虫歯予防の効果があるとされ、全体的にみても予防率は50~60%になると報告されています。
成人に多い虫歯は奥歯や歯の根元、歯と歯の間の隙間などにできる虫歯ですが、フッ素はこうした虫歯にも対しても予効果があります。調査によると、フッ素によるうがいで約40%の予防効果が認められたそうです。さらに高齢者の虫歯の予防にも効果的だと報告されています。
子供の頃からのフッ素うがいは効果が持続
歯が生えたばかりの子供の頃から、フッ素によるうがいをさせると、虫歯菌の歯の表面を溶かす作用(脱灰)に対して強い抵抗力を持つ歯になります。
その効果は、フッ素によるうがいをやめても持続することが分かっています。4歳から中学卒業時までフッ素うがいをしていて、その後はやめてしまった20歳の男女を対象にした調査によると、フッ素うがいをしたことのない20歳の男女と比べ、虫歯が50~58%少ないという結果がでたそうです。
前歯に対して大きな効果
フッ素うがいの効果が最も現れるのは、平らな面が大きい前歯です。歯の咬む面や頬や舌に接した側面、歯と歯の間の隙間など、歯のどの面に対しても高い虫歯予防効果が確認されていますが、歯の平らな面に対しては特に効果的だとされます。
すべての面がほぼ平らな前歯では、虫歯の発生がほとんど見られなくなります。
最も経済的な虫歯予防法
フッ素うがいの効果を経済的な視点から分析すると、フッ素うがいにかけた費用に対するむし歯治療費抑制の利益は1:40になります。たとえば、フッ素うがいに1000円の経費をかけると40000円のむし歯治療費が節約される計算です。経済効率の観点からも、フッ素うがいはすぐれた方法だといえます。
これらのことから、日本では現在、虫歯予防としてフッ素うがいを全国で22万人の子供が実施しています。