普段、私たちは何気なく物を噛んでいますが、この噛む力の大切さについて考えたことはあるでしょうか。実は、「噛む力」は食事はもちろん、会話や呼吸、運動などと密接な関わりがあります。
当たり前のことですが、噛むことができなければ、食事のとき、食物を噛み砕いて細かくし飲み込むことができません。人は食物をかみ砕くことで、食べ物を消化しやすくし、栄養を体内に取り込んでいるのです。
しっかりと噛む力を発揮するのに、重要なのが噛み合わせです。噛み合わせが悪いと、しっかりと噛むことができませんし、空気が漏れるなどして、はっきり発音できなくなったりもします。
また、歯をしっかり噛み合わせることで、筋肉を上手に動かし、健康な状態を維持することもできます。
噛み合わせは、噛む力を十分に発揮するために重要であり、私たちの生活や健康に大きな意味を持つのです。
悪い噛み合わせの悪影響は全身に
噛み合わせが悪いと、食べ物をうまく噛めないだけでなく、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。
例えば、歯ぎしりなどの無意識な習慣や、日常生活でのストレスによって食いしばりを頻繁におこなっていると、歯や顎に余分な力がかかり、歯並びや顎の形が変わってきます。これによって、顎関節症を引き起こす場合があります。
また、歯や顎の形が変わると、全身の骨格や筋肉までもゆがんでしまうことがあります。顎の筋肉は首や肩の筋肉ともつながっているので、慢性的な頭痛や肩こりを引き起こすこともあります。
逆に、噛み合わせを改善すると、こうした慢性的な痛みから解放され、骨格や筋肉がバランスよく改善することが期待できるのです。
噛み合わせが悪くなる原因とは
噛み合わせや歯並びが悪くなる原因にはいくつかあり、遺伝や生まれつきの骨格が要因となることもありますが、多くの場合、癖や生活習慣だとされます。
生活習慣で、噛み合わせに影響するといわれているのは、就寝時の姿勢や歯ぎしり、噛みしめ癖、頬杖などです。また、口呼吸や舌の緊張も噛み合わせを悪くする可能性がありますし、加齢によっても自然と歯は前に動いていきます。
長期にわたって歯や顎、顔全体に余分な力が加わるような習慣や癖があると、噛み合わせや歯並びがしだいに悪くなってしまいます。
噛み合わせの悪さが気になったときは、歯科医院で生活指導などを受けると、改善することもあります。
噛み合わせは、どう直す?
噛み合わせを整える方法は、噛み合わせが悪くなった原因や症状によって、さまざまな方法があります。
そのため、まずは検査や診断を行って、歯や顎、噛み合わせなどの状態を詳しくチェックします。そして、原因を突き止めたら、その原因を正すための治療方針をたてます。
生活習慣の改善
噛み合わせを悪化させるような習慣や癖があるときは、まず本人がそれらの習慣や癖による悪影響を自覚することが大切です。
そして、治療では直接、歯並びなどのバランスを整えながら、そうした癖がでないように注意して日常生活を送ってもらいます。
咬合再構成とは
歯科専用の素材を使って、歯の形や歯並びを整える治療を「咬合再構成」と呼びます。
歯の形がよくないときは、隣の歯などとのバランスがとれるよう被せ物をしたり、合っていない差し歯をより良いものに変えたりして、全体の噛み合わせのバランスをとります。
早期接触の除去
噛み合わせ異常の原因のひとつに「早期接触」という症状があります。
普通、リラックスした状態で口を閉じると、すべての歯が同時に接触します。しかし一部の歯だけが先に接触してしまうのが早期接触です。
特定の歯だけが先に接触してしまうと、食べ物を噛むなどするときに邪魔になるので、人は無意識のうちに接触を避けるような噛み方をするようになってしまいます。
そして、そのような噛み方を長い間続けていくうちに、顎の骨や関節の変形し、顎関節症を引き起こしてしまいます。顎関節症になると、当然噛み合わせも悪くなってしまいます。
せっかく、歯並びを矯正しても、早期接触が直っていなければ、正しい噛み方ができないので意味がありません。
また、早期接触の原因が銀歯やブリッジだったというケースもあります。せっかく歯を治療したのに、それが早期接触の原因になってしまっては、元も子もありませんが、虫歯などを治療する際、噛み合わせをきちんとチェックしないと、そうしたことも起こります。
早期接触がないかどうか、矯正の前に確認することも重要なのです。